
文書作成日:2025/09/30
定期健康診断(以下、「健康診断」という)を秋に実施している企業も多いと思いますが、健康診断の受診後の結果に異常の所見があった場合の取扱いなど、健康診断実施後に求められる対応が適切にできていないケースが見受けられます。そこで今回は、健康診断の実施後の対応についてとり上げます。
[1]有所見者への対応
健康診断を実施した後、医師等により異常の所見がある(有所見)かが判断され、有所見のときには、会社は医師等から就業に関する意見を聴取する必要があります。この聴取する意見については、就業上の措置に関して、その必要性の有無、講ずべき措置を聞き、その内容を健康診断結果へ記載してもらいます。講ずべき措置については下表の通りです。
この医師等の意見を勘案し、会社が必要があると認めるときは、その従業員の実情を考慮して、労働時間の短縮、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少等の措置を講じたり、医師等の意見を衛生委員会等へ報告したりするなどの対応が求められます。
表 医師からの意見聴取の内容
就業区分 | 就業上の措置の内容 | ||
区分 | 内容 | ||
通常勤務 | 通常の勤務でよいもの | ー | |
就業制限 | 勤務に制限を加える必要のあるもの | 勤務による不可を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる。 | |
要休業 | 勤務を休む必要のあるもの | 療養のため、休暇、休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。 |
[2]再検査・精密検査となった従業員への対応
健康診断の実施後に再検査・精密検査となった従業員に対して、会社はどのような対応が必要なのか、迷うケースが多いようです。定期健康診断については、会社に実施義務が課されていますが、この再検査・精密検査については会社に実施義務はなく、厚生労働省が公示する「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」の中で、会社に対して再検査・精密検査の受診を勧奨する努力義務が課されています。
[3]定期健康診断結果報告書の提出
常時50人以上の労働者を使用している事業場については、健康診断実施後、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署へ提出しなければなりません。また、この提出は、2025年1月より電子申請での提出が義務となっています。
労働基準監督署の調査では、有所見とされた後に医師等からの意見を聴取していないとして、是正勧告が行われる事例が見受けられます。健康診断結果が届いた際には、必ず医師等から意見を聴取するなど、必要な対応を進めましょう。
厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について」
厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)」
厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(改正 平成29年4月14日 健康診断結果措置指針公示第9号)」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
- 異例づくしとなった2025年度の地域別最低賃金の改定2025/09/23
- 10月1日より創設される教育訓練休暇給付金2025/09/16
- 変更となる19歳以上23歳未満の健康保険の被扶養者要件2025/09/09
- 2024年度の労基署監督指導における賃金不払事案金額は172億円2025/09/02
- 長時間労働が疑われる事業場への監督指導結果2025/08/26
- 40.5%まで上昇した男性の育児休業取得率2025/08/19
- 年収130万円の壁に対応したキャリアアップ助成金の新設コース2025/08/12
- スポットワークを利用する際の注意点2025/08/05
- 1,000件超となった精神障害の労災支給決定件数2025/07/29
- 従業員の自宅に届く協会けんぽの資格確認書2025/07/22
- 重要度が増す仕事と育児・介護の両立に関する個別周知等2025/07/15
- 今後、対応が必要となるカスハラ対策と就活セクハラ対策2025/07/08
- 高校生をアルバイトとして雇用する際の注意点2025/07/01
- 10月施行の改正育児・介護休業法「柔軟な働き方を実現するための措置」への対応2025/06/24
- 4年連続増加となった休業4日以上の死傷者数2025/06/17
- 見直しが濃厚となった大学生の健康保険の扶養年収基準2025/06/10
- 改正労働安全衛生法の成立と7月から始まる全国安全週間2025/06/03
- 腰痛の労災認定の考え方2025/05/27
- 不妊治療と仕事との両立の職場づくりマニュアルと助成金2025/05/20
- 厚生労働省による業種別カスタマーハラスメント対策の取組支援2025/05/13
- 6月より義務化される新たな熱中症対策2025/05/06
- 給与が「〇〇pay」等のデジタルで受け取れるようになる賃金のデジタル払い2025/04/29
- 割増賃金の基礎となる賃金と最低賃金の対象となる賃金の違い2025/04/22
- 2025年4月より短縮された雇用保険の基本手当を受給できるまでの給付制限期間2025/04/15
- 支給対象者の範囲や助成額が大幅変更となるキャリアアップ助成金2025/04/08
- 2025年度の雇用保険料率と賃金の考え方2025/04/01
- 4月に創設される育児時短就業給付金2025/03/25
- 3月分以降の協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率2025/03/18
- 3歳未満の子を養育する従業員が利用できる年金額計算の特例2025/03/11
- 36協定を締結する際の注意点2025/03/04
- 4月から始まる出生後休業支援給付金2025/02/25
- 民間企業の障害者実雇用率は過去最高の2.41%に上昇2025/02/18
- ストレスチェックの概要と活用2025/02/11
- 企業の年間休日日数の平均は過去最高の112.1日に2025/02/04
- 65歳以上定年企業は全体の32.6%2025/01/28
- 2024年12月より拡充された両立支援等助成金2025/01/21
- 社会保険の2つの年収の壁2025/01/14
- 2025年1月20日から始まる退職者のマイナポータルに離職票を送付するサービス2025/01/07
- 今後数年のうちに施行される人事労務関連の法令改正2024/12/31
- 2025年4月1日から支給率が低下する高年齢雇用継続給付2024/12/24
- 健康保険 資格確認書と資格情報のお知らせの再交付手続き2024/12/17
- 長時間労働者への実施が求められる医師の面接指導2024/12/10
- 36協定の限度時間を超えて時間外労働をさせる際の注意点2024/12/03
- 次世代法における一般事業主行動計画の策定等と改正2024/11/26
- 改めて確認したい労働時間の取り扱い2024/11/19
- 12月2日から変わる社会保険の資格取得手続き2024/11/12
- 自転車の危険運転に対する罰則の創設とその対応2024/11/05
- 今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン2024/10/29
- 2024年10月より支給要件が見直しとなった特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)2024/10/22
- 厚生労働省調査からみる男女別の離職理由2024/10/15
- 連続する勤務や休憩時間に関するよくある質問2024/10/08