文書作成日:2021/12/09

 坂本工業では、従業員が業務中にケガをしてしまい、2週間自宅療養が必要となった。今後、労災保険の給付申請を行う予定であるが、最初の3日間の取扱いがわからず、社労士に確認することにした。

 工場で働く従業員が仕事中にケガをしてしまいました。障害が残るような事故ではありませんが、病院から2週間自宅療養が必要だという診断書が出てきたことから、休むことになりそうです。今後、労災保険の申請(療養補償給付と休業補償給付)の手続きを行う予定ですが、休業補償給付は休業4日目から支給されると聞きました。最初の3日間について、どのように対応すればよいのでしょうか。

 それは大変でしたね。少しでも早い回復を願っています。今回の対応に当たってはまず、労働基準法と労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」という)の関係を確認することが重要です。

 え?労働基準法ですか?当社は労災保険に加入しているので、当然、労災保険から給付が受けられるのですよね?

 本来、仕事中のケガに関する補償は、労働基準法に基づき会社が行う責任があります。この補償に関し、労災保険法がカバーするという形になっています。つまり、会社は労災保険に加入し保険料を払い、被災者が給付を受けられることで、労働基準法に基づく補償を行う必要はない仕組みになっています。ただし、従業員の休業に対する補償で、最初の3日間については労災保険から補償が行われません(待期期間)。そのため、この待期期間については会社が補償する必要があるのです。

 なるほど。そのような関係なのですね。

 その際、3日間のカウント方法について間違いやすいので注意が必要です。まとめると以下のようになります。

  1. 所定労働時間中に労災が発生し、そのまま病院へ行った場合
     労災発生日を含め3日間が待期期間
  2. 所定労働時間に労災が発生したが終業時刻まで1日勤務し、所定労働時間後に病院へ行った場合
     労災発生日の翌日から3日間が待期期間
  3. 所定労働時間後の残業中に労災が発生し、病院へ行った場合
     労災発生日の翌日から3日間が待期期間

 労災の時刻と、病院へ行った時刻で取扱いが異なるのですね。今回は所定労働時間内に労災が発生しました。それが先週金曜日の午前中で、そのまま病院に行きました。

 それであれば、金曜日を1日目としてカウントします。さらにこの3日間は会社の所定休日に関係なく、暦でカウントします。土曜日・日曜日が所定休日であっても、待期期間は金曜日、土曜日、日曜日の3日間になります。

 当然、土曜日・日曜日は自宅療養をしていたそうなので、4日目となる翌週の月曜日からは労災保険の休業補償給付が支給されるということですね。

 はい、そうですね。日曜日までの3日間は労働基準法に基づき平均賃金の6割を支給する必要があります。

 承知しました。ところで、労災事故が発生した日は数時間働いていたようですが、その部分はどのように考えればよいですか?

 働いた数時間は当然、通常の給与を支払ってください。その後、病院にいって治療することで働かなかった時間については、平均賃金から働いた数時間の給与分を除いて、その6割を計算して支給する必要があります。ただ、細かな計算になることもあり、このようなケースでは労災が発生した日については満額の給与を支給することも多いように思います。

 なるほど、参考になります。ちなみに当社の休日であった土曜日・日曜日はどのように考えればよいですか?

 はい。この労災事故に遭われた方が時給者や日給者の場合には、土曜日・日曜日も平均賃金の6割を支給すればよいのですが、月給者の場合には少しややこしいです。まず、不就労の日について月給から給与を減額しないいわゆる完全月給の場合には、土曜日・日曜日も給与が支給されたことになります。一方、欠勤日数に給与を減額するような取り扱いをしており、今回の労災事故後、不就労分の給与を控除する場合には、土曜日・日曜日に給与が支給されていないことになります。したがって、土曜日・日曜日も休業補償を払う必要があります。

 なるほど、給与の支払い方によっても対応が異なってくるのですね。

 一度、会社が支払うべき休業補償の金額等を計算してみます。ありがとうございました。

>>次回に続く



 病気やケガで休んだときの給付としては、私傷病にかかるものとして健康保険の傷病手当金があります。傷病手当金も3日間の待期期間がありますが、この3日間は連続している必要があります。一方の労災保険における休業補償の待期期間は連続している必要はなく、例えば災害発生の翌日に何らかの理由で出勤せざるを得なかったとしても、出勤した日を除き3日間を待期期間としてカウントすることができます。労災保険の休業補償給付と取り扱いが異なることを押さえておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「労働災害が発生したとき」


※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。